これまでも何度か出演させていただいた、横浜市にある地域最大級の大型パチンコ店が一周年を向かえました。 この日、当初はアカペラソングが入る予定でしたが、前月に開催した中国雑技が相当盛り上がって楽しかったようで、急遽「アカペラをやめて今度はサーカスをやりたい」ということになり、相談を受けました。
(※備考;この店は大人気店のため、混乱を避けるために10時半から5人ずつ整理しながら入店後、席取りを終えても正午までは遊戯開始できません。その待ち時間をイベントで埋める必要があるわけです)
「中国雑技、以上の盛り上がりを期待しています!」と言われつつも、今回のイベントに割ける予算は雑技の半分。 非常に難しい要望だな、とも思いつつ、与えられた条件の中で何が出来るか考えてみました。
サーカスそのものはできないけど、じゃあ…色んなジャンルの芸のバラエティオムニバス、いわば『芸能ショーの闇鍋』じゃ!
早速キャスティングの交渉を開始しました。 そして出来上がった出演プログラムが、 “剣玉チャンピオンによるアーティスティック剣玉パフォーマンス” “一輪車チャンピオンによる一輪車パフォーマンス” “日本が誇るマジック界の爆笑王” “イケメンジャグラーのマシンガントークジャグリング/ファイヤー&火吹きフィナーレ” そして僕(キャッチフレーズは後述)というラインナップで構成してみました。
実施がお祭り会場やデパート広場のステージなら、黙ってても人はたくさん集まるでしょう。 でもここはパチンコ屋。 お客さんがなかなかパフォを見てくれない、という意味では、難しさナンバーワンと言っても過言ではない現場です。 どうしても、せっかく集ってくれたこの人達のショーを、鈴なりの客席のなかで見せたい、イコール、たくさんのお客さんの前で気持ちよく演じてもらいたい。
そう思い、心身を削りつつ色々作戦や構成を考えました。
まずは、皆に先立って、入店前に店外に並んでいるお客さんに対し、開店待ちの退屈緩和として、足長でグリーティング(と称して、実情はステージショーの告知MCしまくり)。 ドアオープン時、入り口にてウェルカム(と称して、ステージショーを告知MCしまくり)。 お客様の入店後、店内をグリーティング(と称して、ショーの告知MCしまくり)。
ステージのトップバッターは、客寄せとしてもちろん僕が務めました。 トップバッターと言っても、ドアオープンの後、ステージ開始時間と重なって、何か賞品のサンプリング(無料配布)があるので、そこにどわっと行列が出来てしまいます。 これがなかなか演ってて苦しいのは、配布状況の列を横目で見ながら自分のパフォ尺を決めるので、間も悪く厳しくなります。 でも、いまは客もまばらで雰囲気サムくても、音楽ガンガンかけてにぎやかに動いて“あそこで何かやってる感”を出しまくってれば、賞品もらっちゃえば必ずこちらに来るはずだ。
しつこい告知も相まって、ようやく集客に成功しました。 「よし、こっから本当の本番だ!」とばかりに、僕の客寄せパフォーマンスの後にオープニング、全出演者の紹介を配置しました。
そこからは、各ショーをアオるMC役を務めました。 例えば、「続きましては、剣玉チャンピオンによる素晴らしい剣玉のショーです。20年磨き続け熟成された技の数々で、剣玉はアートの域に達しました。それでは、…」みたいな感じです。
無事、一組目(実質二組目ネ)から満席の前で行なうことができ、ドカドカ沸いている見事なショーを袖から見ながら、「あぁ、この人達と“友達”でほんとにいいのかなぁ、幸せだなぁ」としみじみ感じました。
無事に終演、そして大盛況のカーテンコール。
残す役目はあと一つ、正午の「遊戯開始10カウントダウン」です。 それはもう、楽勝、のはず…が。オマケが。
「57分に店内BGMを止めるので、カウントダウンまでMCしてください」
えぇっ……!? パフォーマンスにまつわるMCなら言葉もスラスラ出てこようもんですが、それはパチンコに関するトークをしなければならないということ?
いやいや、それは無理かも…でもやるしかないので、やったら…できた、できました。 カウントダウンまで、パチンコ店本来としてのMC、喋れてるじゃん、自分。
「10、9、…2、1、0!」で、今度こそほんとのホントに全終了。 その瞬間、「おかあさんといっしょ」公演が終わった瞬間はるか以上にジーンを自分の胸にこみ上げるものがありました。 辛いんだか嬉しいんだか分からない涙がにじんできました。 無事に終了した安堵感、重責からの開放感、共演者への憧れと感謝。 自分も目立ちたい、おミソに見られるのは嫌だという自我、企画の成功を最優先させるプロとしての責任。
現場では、そのようなことは一言も漏らせません。
ただ、せめてここでなら漏らしてもいいんじゃないか、 せめてここを読んでくれる僅かな私的に話せるひと達だけでも、築きあげられた立派なお城や橋の地中には、“人柱”として埋まった僕の死体があるということを、願わくば現場に一人でも気付いてくれる人がいるのならば、それが何よりの報いに思います。
(2006.3.31[Fri]) |